国際化


 今までのところ、日本は多文化主義という西洋の考え方に対してかなり抵抗を示してきました。しかし、最近の教育改革はみなさんの学校教育制度の中に国際化という概念を導入しました。それは、(a)ほかの文化について教えることと(b)日本の文化的遺産とアイデンティティを学ぶ、ということを強調しています。もう一人の私が教えた博士課程の学生は、日本人ですが、西洋の多文化主義の美術教育の理論と実践について、こうした国際化の改革に役立つものかどうかをさぐる研究をしました。その後、彼女は日本の教師の文化的な多様性と美術に対する態度についての調査を行いました。


 彼女の報告によると、日本の美術教育の重要な特徴は、それがバイ・カルチュラル、二つの文化にもとづいている、というものでした。(西洋と日本の美術に同じくらいの注意を向けています)。しかし、彼女が調査した美術の教師たちは、他の国や世界のほかの地域、また日本の少数民族の美術を教えることにはほとんど関心を示しませんでした。さらには、彼らは西洋美術にもっとも強い結びつきを感じ、日本の文化的遺産を教える能力がないことを憂慮していました。


 日本は公式には、自分たちの国はモノ・カルチュラル、「単一の文化」であると規定していますから、多文化主義の美術教育の西洋的なモデルの特徴である少数民族の美術を強調することは、適切ではないと、この学生は結論づけています。彼女の解釈によると、教育の国際化という改革の中に提起された日本の文化遺産を再び活性化するという考えは、日本の人々が自分たちを、世界をリードする強い国々の中に国際的に位置づけようとする試みであるということです。


 

 (韓国もまた、最近、教育の国際化という改革を打ち出したということです。私の教えている韓国人の博士課程の学生は、多文化主義の教育を、子どもたちが韓国の美術的な遺産と、その中国や日本との関係について理解を深めさせるという意味であると解釈しています。すると、こういうことになるのでしょうか。つまり、ダイナミックな経済的発展を見せている、東アジア地域における新しい多文化主義の誕生を、私たちは目の当たりにしているのであると。そしてそれは東洋の文化的伝統と思考のシステムに対する再評価を反映している、ということになるのでしょうか。)



Copyright (c) Rachel Mason, 1996


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