住み手のひとりごと 04/21/2001

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■道具として
食や生理欲求のコントロールに欠かせないのは水とエネルギーと情報である.
これらの存在もまた主張してもらいたかった.そのため,配管配線またコンセントなどの所在は見せることになった.使うという行為の中にライフラインのあり方だけでなく,それらに使われる素材の特徴についても考えることが含まれることになる.
とは言え,使いやすいに越したことはない.そこでコンセントは無駄な露出を避けて壁又は床など「沿わせることの出来る構造体」に近寄せて配置した.結果,それらを利用する器具にとって無理のかからない配線が出来るはずである.また,書庫室においてはコンセントを天井に設置し,生活の中で効率的なパワーラインの供給ルートを考えて使うことができるように設計されている.主な部屋には電話テレビネットワークを全て配線して情報アクセシビリティを確保した.

水回りの一つの役割は清浄作用である.
清浄作用に関わる3つの機能:手洗い,体洗い,排泄 を積極的にまとめることによって使い勝手の良い空間が生まれる.デザインには,これを単なる効率追求に見せない空間構成で包むことを要求した.

水回りのもう一の役割である食空間は住居の中でもっとも高機能高密度な空間である.
食材加工の際にはあらゆる場面で水が関わってくる.そこで,流しと作業台は水切り流しでまかなった.立位で精密作業を行う場合,作業台は無理なく明視の距離が取れること,つまり頭との関係が条件となる.これはおおむね身長から4-500mm 低い.しかし包丁作業は軽作業なので水切り流し台の上面は肘高さを目安として,おおむね850mmとした.一方,食材加工に欠かせない加熱調理では,少なからず重量のある器具,つまりフライパンや鍋に水や食材を入れてさらに重くして肩で仕事をする.そこで肘から先が下に向いて動く必要がある.指先点高は,おおむね身長の 3/8 倍で,大人の場合はだいたい600mm 台にあるため,ためコンロの上面はこれより高く身長の6/11よりも低い 700mm 程度とした.実際,これはフライパンの中を上から見ながら作業が出来る高さである.もちろん,作業面が低すぎればコンロの下に煉瓦でも置けばよい.一方で,流し台の高さをあとから高くするのは難しい.高すぎる流し台を使うためには靴を履けば良い.平均を目指すのではなく,考えながら使うことを前提として可能な限り障害を排除するという設計は後々最適な使い方を可能にする.
さらに,他のどの部屋よりもコンセントを多く設け,電話・テレビ・ネットワークがすべて使えるように準備した.

さて,大人が立位で自然に手が届く下限は600mm台なので,スィッチ類の高さは1000mmあれば大人の操作には不都合はない.一方,当面この家に住むもっとも小さい人は身長が約1000mm なので自然にて賀届く高さは1200mmより低い.子供による操作を防ぐためであるならばスィッチの高さを1200mmないし更に高い位置に設定することは合理的だが,子供に操作をさせないこと自体が不合理である.そこで,この家の扉の手掛かりやスィッチ類は900 - 1000mm となった.ここにも考えることや考えさせる部分がある.


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