日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会
イベント
2011年

海の酸性化と海洋生態系

出題:
濱 健夫  生命環境科系(教員)
佐藤雄飛 持続環境学専攻DC1年(学生)
澤井茉利奈 環境科学専攻MC2年(学生)
井上 幸樹 生物学類3年(学生)

専門領域:
水圏生態学

イラスト制作:
小澤ふみの 芸術専門学群1年
宮崎 玲子 芸術専門学群1年

目的:海洋生態系に関する一般的解説書
対象:学生を含む一般読者
サイズ : A4横位置・カラー(50%に縮小して使用)

問題

人類の化石燃料の使用などによって大気中の二酸化炭素濃度は年々増加している。その一部は海洋によって吸収され、その結果海水中の水素イオン(H+)が増加して海洋の酸性化がおこる。海洋酸性化による水素イオンの増加によって炭酸カルシウム(CaCO3)生成に必要な炭酸イオン(CO32-)が減少し、サンゴなど炭酸カルシウムの形成を行う生物やそれを含む生態系は大きな影響を受けると考えられている。以上を踏まえ、海洋酸性化のメカニズムとそれが海洋生物に対して与える影響について、学生を含む一般読者に分かりやすく伝えるイラストを描きなさい。


話し合った内容のポイント

・「おもしろい」「きれいだ」「わかりやすい」と思ってもらえるようなイラストにするにはどうしたらいいか
・一般向けという点をよく考えた上で、要点をわかりやすく伝えるには化学式やイオンといった専門的な概念などをどの程度組み込んでいくか
・ある生物単体だけでなく生態系への影響といったものを1枚のイラストの中でどう表していくか


アイデアスケッチ

小澤(左図)

このアイディアスケッチの段階では、化学平衡式で酸性化のメカニズムを表している。また、サンゴやエビ、それを食べる魚を描くことで、読者に具体的なイメージが伝わるようにした。

宮崎(右図)

アイデアスケッチで意識したことは、左右の対比である。私の絵は右と左でのシチュエーションの違いを見せることが肝だったので、より分かりやすくなるよう考えながらスケッチをした。また、アイデアスケッチではCO2の脅威があまり目立ってないことが、本番のイラストを描くうえでの一番の反省点だった。


完成作品

イラスト制作:
小澤 ふみの  芸術専門学群1年

どの物質がどのようにはたらくことでどんな影響があるのか、その関係性の表し方に苦労した。最終的には化学平衡式を省き、より、目で見てわかりやすい図をめざした。また、画面の右側と左側の変化で海洋酸性化が進行していく様子を表した。

イラスト制作:
宮崎玲子 芸術専門学群1年

私はこのテーマで重要な「炭酸カルシウム」と「二酸化炭素」をキャラ化して、より親しみやすく一般の人々にとって分かりやすくなるように、という狙いでこのイラストを制作した。また絵本のようなイメージにしようと思い、あえて手書きの文字や彩度の高い色を使って、リアルな陰影などはつけないようにした。