はじめてのスタイリングデザイン

スーパードラゴン2募集

スーパードラゴン2 デザインコンクール (C)小学館

ホームページが真っ白のままだと大変怪しい先生だと思われるので、今日は珍しく、なんで私がプロダクトデザインの仕事を始めたのか、そのきっかけについて書こうと思います。

コロコロコミック」という雑誌はご存知ですよね。そう、良い子のみんなが大好きな、あの雑誌です。

1985年のコロコロに、ある募集の記事が掲載されました。当時のちびっ子達に圧倒的な人気を誇っていた「ラジコンボーイ」という漫画に登場する、ラジコンのボディデザインを一般公募するという内容です。

世の中のラジコンブームは圧倒的で、田舎育ちの小学生の世界観を覆い尽くすには十分なコンテンツです。テレビをつければ右も左も田宮模型。ラジコンの事なら何でも知ってる滝博士の話に朝から晩まで釘付けで、情熱の赤と誠実の青がちびっ子達全員の座右の銘でした。(要出典)

当時10歳の私は、特に自動車が大好きという訳ではありませんが、ブームに乗ってラジコンには興味津々です。工作大好きで、まわりの人より少しだけ絵が描けた私は、なんとなくこのコンペに応募してみようと思いました。

しかし、自動車の絵をパースを付けて描くなんてやったことありませんし、ワンボックスとスポーツカーの区別すら怪しい。そもそも自動車のボディをデザインするという仕事が世の中にあるという事も、まだ知らないお年頃です。
お手本が無いながらも、自動車の形が分かる角度にボディを何度も下書きし、官製はがきの裏にトレースし(なぜかライトボックスを自作して写した)、色鉛筆で色を塗って絵を仕上げました。我ながら上手に描けたなという実感があったけれど、ポストに葉書を入れるのがちょっと恥ずかしかったのを、今でも覚えています。

スーパードラゴン2発表

スーパードラゴン2発表 (C)小学館

そして迎えた結果発表。

…残念ながらグランプリには選ばれませんでしたが、なんと佳作に選んで頂けました。そして、副賞としてFOX(当時発売されていたラジコン)のロゴが入ったTシャツも貰いました。田舎の小学生、大喜びです。学校に行ってみんなに言いたい。声を大にして!

「そうか、ボディだけじゃなくてタイヤや地面も描けばよかったんだ」
「かっこいい名前も考えればよかったのか」
「こういうの、読んでるだけじゃなくて、送ってみるもんだな」

いろいろ考える事はありましたが、私が初めて応募したコンペは、何の夢もなかった田舎の小学生の退屈な人生に目標を示してくれました。そして、「とりあえずやってみる事」の面白さを知ってしまったのです。
先生に言われた事や、学校の勉強以外にも楽しい事がたくさんあるけれど、それは自分で挑戦してみないとわからない。

審査発表

審査発表(c)小学館
前ちゃんも審査員!

その後、美術の高校に入り、デザインというお仕事が世の中にあることを知ります。大学ではプロダクトデザインを専攻し、ラジコンの絵を描いていた田舎の小僧は、小さいころの夢であったカーデザイナーとして、自動車会社に就職する事ができたのでした。
めでたしめでたし。
…と書くとなんだか美談みたいですが、世の中そんなに単純ではありません。もう自動車のスタイリングデザインからはすっかり足を洗っています。
なんでスタイリングのお仕事をしないか?という話は、また気が向いたら改めて。

余談ですが、大学の学外演習で田宮模型を訪れた際、滝博士にお会いして話を伺う事ができました。ラジコンのボディは博士のアドリブで作られていたという衝撃事実も…(笑



謝辞

今回の記事作成にあたり、小学館のカスタマサポートに問い合わせを行ったところ、なんとバックナンバーを探し、スキャンして送って頂けるという神対応をしてくださいました。小学館様には孫子の代まで足を向けて寝られません。資料のご提供、大変ありがとうございました。

 

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