iPad Pro を買おうか迷っている人へ (その1)
最近、学生さん達から「iPad Pro どうすか」とかよく聞かれます。
高い買い物なので迷いますよね。
ヤマダ個人としては、9.7インチの iPad Pro + Apple Pencil は買いです。
これまでいろんな持ち運び可能な液タブもどきのツールを、身銭を切って試してきましたが、ようやく満足できるハードが出たな、という感じです。
迷いポイントを5つほど書きましたので、参考にしてみてください。
筑波大学の学生なら、ここから買うと割引が適応されますよ。
ちなみに、Apple Pencil 以外の Bluetooth 接続型のペンがいくつかありますが、どれも絵を描く道具としては論外なので検討しなくていいです。
迷いポイント1:ペンタブ、液タブ、iPad Pro どれがいいですか?
芸術コースの学生さんですから、絵を描く道具として買うんでしょうね。
液タブもペンタブも画面に同じように絵を描く道具だと思われがちですけど、使い勝手が違います。
良し悪しというよりは、違う道具だという認識のもとに、自分の使いやすさや目的にあった道具を選ぶといいでしょう。
選んだ道具で作品の善し悪しが決まることは、まずありません。
ペンタブ
- メリット
- 少々雑に扱っても壊れない
- 小さいものだと軽い。ノートパソコンと一緒に持ち歩ける重さ
- 安い
- Photoshop などのパソコンのアプリがそのまま使える
- ペンの入り抜きのコントロールがしやすい
- デメリット
- 画面に描くわけではないので、手元と画面のズレを補正するために訓練が必要
- 動作にはパソコンが必要
液タブ
- メリット
- ペンタブに比べると、画面に描くので直感的
- Photoshop などのパソコンのアプリがそのまま使える
- ペンの入り抜きのコントロールがしやすい
- デメリット
- 高い。
- 重い。持ち運びはほぼ不可能(パソコンが必須なので、2つ持ったら3kg以上は覚悟)。そして落とすと壊れる可能性大。持ち運ぶ道具ではないです。
- キャリブレーション(ペン先とカーソルの位置の精度)がイマイチ(iPad Pro ほど正確ではない。画面端にいくほどペンの位置と描けている場所がズレる)
- ペンと画面の間の空間のせいで、少し浮いた感じがする(が、これはそのうち慣れる)
- 動作にはパソコンが必要。パソコン一体型もあるが、Windowsのみ。別々に買うよりも割高なのでオススメしないです。
iPad Pro + Apple Pencil
- メリット
- 軽い。9.7インチ版はパソコンと一緒に持って歩けるギリギリの重さ
- 画面が美しい。
- 単体で使える(パソコンがなくても絵が描ける)
- ペンのキャリブレーションがとても正確で、画面の全エリアでペン先と描画位置のズレがない(これはかなり重要。特に鉛筆系の描き味は紙と置き換えてもよいレベル)
- Procreate が使える。この1点だけで、Photoshop を使えないデメリットの7割くらいはカバーできるんじゃないでしょうか。特に鉛筆などの、画面に接触する系のツールの描き味はとても良いです。
- 画面拡大などのピンチ操作とペン描画とが高いレベルで融合しているので、大変直感的。
- デメリット
- 高い。
- 線の入り抜きに関してはやっぱりペンタブの方が柔軟。エアブラシっぽい表現は、個人的にはペンタブや液タブの方が気持ちよく描けます。
- ペンの充電が必要(だけどそんなに困らない。Lightningコネクタのフタを無くしそうだけど)
- Photoshop などの、パソコンで使っていたツールが使えない(同名の iPad のアプリは機能が劣ることが多い)
ポイントは、価格、OSの種類(Win or Mac or iOS)、重さ、画面の美しさ、使いたいアプリの有無、ペンの応答速度でしょうかね。
迷いポイント2:ノートパソコンのかわりになりますか?
なりません。
これでノートパソコンいらないやワーイと思っている人は残念でした。
メールの返事を書いたり、インターネットをやったりは出来ますが、クリエイティブな作業を全て完結させるためには、まだまだ未熟な道具だと思います。
特に、画面のタッチ操作とキーボードをいったりきたりするのは本当に苦痛です。
以下、具体的にノートパソコンの代わりにはならないと思うところ。
- 日本語変換がイマイチ(フリック入力に慣れて居ればなんとか可能)
- パソコンでは出来ていたことが出来ない。
パソコン版と同名のアプリなのに、機能が制限されている。特にデザイン系の人は、フルスペックの Illustrator や InDesign が使えないのは結構致命的です。 - 3Dモデリング、アニメーションの制作が出来ない(というか、劣る。ちょっとこれで作る根性は私にはありません)
- 動画編集も現時点では劣る(が、このへんは時間の問題かもしれない)
- プログラムを書けない。パソコンで使っている便利なIDEはありません。コマンドラインも叩けなければVMを立ち上げたり、Arduino なんかを繋いでゴニョゴニョしたりも無理です。
総じて、パソコンのかわりにはならないんですが、全くパソコンを使った事がない人ならその不便さはわからないので、絵を描くだけと割り切ったら気にならないかもしれません。
ただ、ノートパソコンの代わりにはならないだけで、ノートの代わりにはなると思いますよ。メールの返事程度でも文字を書く機会が多いなら、Smart Keyboard があったほうがいいかもしれない。私はiPadで文字を書かない派なので、キーボードは買いませんでした。
迷いポイント3:12.9インチと9.7インチ、どっちがいいですか?
これは目的によって違うところなんですが、ひとつだけ言えることは、12.9インチは持ち運ぶには重すぎます。
自宅で据え置きにするならいいですが、パソコンを併せて持ち歩くのであれば、9.7インチをお勧めします。
個人的には、9.7インチでも狭いなーとは思わない(むしろ iPad mini のサイズでもいい)ので、お値段的にも9.7インチがよろしいかと。
12.9インチの方は、風の谷のナウシカのワイド版がそのまま表示できる大きさで、マンガを読むには大変よいです。横にした場合も、見開きで十分な大きさで表示されるので、拡大する必要がありません。
…とまあ、そんな事くらいしかおすすめポイントが思いつかないという。PDF の校正の頻度が高い人は、12.9インチの方が便利かもしれない。重いですけど。ええ、重いんですよああ見えて。
迷いポイント4:どのモデルを買ったらいいですか?
基本的には Dropbox などのクラウドと連携して使うでしょうから、容量は32GBだとちょっと不安。128GB以上であれば十分です。写真をガシガシ撮ったり、iTunes の曲をまるごと持ち歩きたい人は大きめの容量をどうぞ。
絵を描く道具としては WI-FI モデルで問題ないですが、クラウド連携という点からいうと、Apple Store で買える Wi-Fi + Cellular モデルに安いSIMを刺しておいて、普通は Wifi、出先で LTE とかになると快適でしょう。キャリアの SIM は今時制約が多いのでおすすめしませんよ。
お試しということであれば、500MBまでの通信料が無料の 0sim を刺すという手も。
私は DMM Mobile の1GBコースを契約中。月額480円+税。私の使い方だと、十分余ります。
迷いポイント5:Surface Pro と iPad Pro ならどっちがいいですか?
Surface Pro は良く出来てるんですが、絵を描くという観点でいうと、iPad Pro の方がいいです。Microsoft さんごめんなさい。
なんといっても、ペンの応答性能が違います。これは私が実際に描いてみた感覚での話なので、怪しいなと思ったら店頭で試してみるといいでしょう。悪くはないけど、iPad Pro + Procreate を触ったあとだと、線が遅れて描けるのがわかります。
ただ、キャリブレーションの精度は結構いいと思いますので、まあ実用の範囲であるとは思います。
Surface はノートパソコンとして使えますから、Adobeのソフトも、IntelliJのIDEも、VMもサーバーも動きます。SAI やクリスタもあります。
そこそこ性能の良いペンも付いてて一見良さそうなですが、以下の点から個人的持ち歩きパソコンから除外されています。惜しい。本当に惜しい。
- タイプカバーがふにゃふにゃでつらい(これが最大の理由。UXの評価で何も言われなかったのだろうか…)
- キーを打つ度に変な振動がある
- トラックパッドを押す度にカタカタいうので、ストレスがたまる (私は特にこれが苦痛でした)
- トラックパッドの感度がMac のガラストラックパッドほど良くない
(使ってたら慣れるんだろうか…1週間くらい試してみましたが、これでプログラムを書くのは無理でした 笑)
- 画面解像度に対して、動いてるソフトの解像度が合ってない。小さいボタンをペンで狙い撃ちするのは苦痛。指では絶対操作不可能。(これは、Windows10が抱える根本的な問題)
- フォント表示が相変わらず汚い。(これはもう諦めるしかないんだろうか…)
そんなにキーボードが嫌なら Surface Book 買えばいいじゃない! となるかもしれませんが、そこをお値段の壁が阻む訳ですよ。
256GB / Intel Core i7 / 8GB / GPU で ¥291,384 ですよね。GPU搭載モデルで1,579gという重さも、ちょっと持ち運ぶにはツライ。
その他
- 画面保護フィルムは要りますか? → いままで何台か iPad を買いましたが、画面に傷がついたことなんてありません。iPhone もガラス面はむき出しですが、落とす以外で傷がついたことはありません。なので、要らないんじゃないでしょうか。
ただ、傷という観点では要らないですが、Apple Pencil の描き味を変えたいから貼るというのはあります。ガラス面のつるつるが嫌な人は試してみてもいいかも。ただし、何を貼っても画面は少し見づらくなりますよ。 - ケースはあったほうがいいですか? → まあ、落とすでしょうから、気休め程度にあったらいいんじゃないでしょうか。Apple純正のシリコンケースは結構品薄です。
本体の傷が気になるようなら、スキンシールを貼るという手もありますね。Wraplus さんのスキンシールが3M製でオススメなんですが、まだ iPad Pro 用のは無いようです。
ハードウェアとしてはこんな感じで、iPad Pro + Apple Pencil はとても良くできてると思います。
特に、下書きや線画については申し分ないです。着色したイラストを業務レベルで完成させるには、例え紙で絵を描けたとしても、iPad Pro + Apple Pencil に対する慣れが必要になると思いますが、たぶん描いてれば慣れるはず。
絵を描くためのアプリの事については、また後日。