時代を超えたテーマ

芸術における皮膚の表現は、時代を超えたテーマとして取り上げられています。2007年に国立国際美術館にて開催された『現代美術の皮膚』展では、現代の作家が皮膚をテーマとして、様々な視点から問題意識やアプローチした作品が展示されました。当時の国立国際美術館主任研究員の平芳幸浩(2007)は、皮膚について以下の様に述べています。

「私たちは例えば化粧を通して、皮膚を「描く場」として使用している。また、古来より刺青という方法を用いて、力の象徴や刑罰の重さや愛情の対象を皮膚に刻み込んできた。 -中略- 顔の皺は皮膚に刻まれた年齢だと言われるし、紅潮したり蒼白になったりと、皮膚は精神状態の変化や疾患による身体偏重を表示するメッセージボードにもなる。皮膚は、私たちに最も身近な支持体なのである。」
(平芳幸浩『現代美術の皮膚』、国立国際美術館、2007年、p.10)

 私の制作研究に大きな影響を与えてきた、デュエイン・ハンソン(Duane Hanson、1925-1995、アメリカ)とロン・ミュエク(Ron Mueck、1958-、イギリス)について調べを進めております。現実的な肌理がどのように制作されてきたのか、素材と着色剤、技法について言及していきます。