樹脂用着色剤も使ってみたり

油絵具を試す一方で、工業用の樹脂用着色剤による着色も試みました。樹脂用着色剤は、顔料の分散性が良く作られており、耐溶剤性が良く、耐熱性、耐候性に優れ、配合剤に対して安定です。また、樹脂の硬化反応を阻害せず、樹脂の劣化を促進しないように作られています。合成樹脂に使用される着色剤には樹脂の適性に応じた素材が必要となってきます。これらを条件とした樹脂用着色剤は、私が視覚的に想像する理想的な肌理の色合いが得られませんでした。更に不飽和ポリエステル樹脂には、硬化後に劣化等の原因となる水分を含んだ水溶性絵具等は使用出来ません。不飽和ポリエステル樹脂の成分は石油化学合成から作られ、アクリル絵具などの水溶性絵具では、水と油になり、相互が混ざらず劣化の原因ともなります。そこで、私は肌理の表現のための適合性、材料の購入のし易さ等、総合的に考えて樹脂用着色剤ではなく油絵具を用いています。
また、これまでに樹脂用着色剤以外を混合の素材とすることは、樹脂の劣化や耐久性が無くなることが考えられるため、樹脂販売業者や樹脂関連の公の資料には記載されていません。しかしながら、本研究にて紹介する油絵具による内部着色を行なった2009年と2012年の私の作品は、室内展示と保管によって現在まで不飽和ポリエステル樹脂の劣化等は見られません。耐久性について本研究にてこれからの課題ではありますが、室内における展示や保管であれば耐久性を保てると考えています。

以上のような背景により、これまでの制作研究における不飽和ポリエステル樹脂と油絵具の混合適正の課題を明らかにするため、内部着色の実験制作によって証明するに至りました。