油絵具を使う?-その2-

油絵具を使用する目的の一つは、グレーズ技法に向いていると考えているからです。私の絵画制作の経験から得たグレーズ技法を立体造形に応用して独自の制作工程を用いています。グレーズ技法は、油絵具を薄く重ねて下の層を透かせることによって絵の質感を作り出して透明感を出す透明技法とも呼ばれます。私の主な立体造形の成形は粘土原型から型材を制作し、そこに内部着色を施した不飽和ポリエステル樹脂を薄く積層していき、3層から4層と重ね合わせ作り出していきます。この時に下の層と上の層が響き合うような色合いを作り出すことによって透明感のある肌理の表現を施していきます。グレーズ技法は、アクリル絵具、顔料のみでも出来ますが、油絵具は発色に優れており、グレーズ技法に向いています。顔料と油を混ぜただけでは油絵具を作り出せません。環境が整備された油絵具の製造業によって、顔料と展色材を練る専用の攪拌機によって攪拌された油絵具を使うことが適しています。更に細かく攪拌させる専用の機械によって練り合わせられた油絵具は優れた分散状態を保っています。油絵具を私が作るべきであるという方向もありますが、現在の市販品は良質であり種類も豊富にあります。油絵具を作ることから始めると立体造形制作に至るまでに相当の時間が掛かるため、私は市販品を利用しています。専門の油絵具の製造業が作った油絵具は安定しているため、グレーズ技法に応用することが出来ると考えます。そして、私が目指している表現に近づけることが出来るのであろうと思います。
作品《暖 (だん)》2009年  FRP D500×W800×H600 mm (10点)撮影:早川宏一