日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会
イベント
2011年

雄と雌の違いの進化

出題:
渡辺守 生命環境科系(教員)
高橋佑磨 生命共存科学専攻(博士特別研究員)

専門領域:
動物生態学

イラスト制作:
北尾典子 芸術専門学群1年
中島靖雄 芸術専門学群1年

目的:性差の進化に関する研究の歴史と今後の展望に関する一般向けの解説
対象:研究者・一般読者(年齢:15歳以上)
サイズ : スライド(横長)1枚に収めることのできるサイズ/カラー

問題

動物の雄と雌は、形態的にも行動的にも異なる点は多い。進化学では、このような性差の生じる進化のシナリオとして、2つの可能性が考えられてきた。ひとつは、雄間の闘争を通じて雄でのみ角などの武器が進化するというシナリオ、もう一つは、雌がより鮮やかな雄を配偶者として選ぶことで、雄において鮮やかさが進化するというシナリオである。しかし近年、さらに2つの可能性のあることが指摘されている。すなわち、雌間の争いや、雄による配偶者の選択により、雌において武器となる形態や鮮やかさが進化するというものである。


話し合った内容のポイント

様々な生物の例を挙げながら、先述の4つの概念の関係性(相違点と共通点)を議論することで、これらの複雑な概念の簡略化を試みた。また、芸術の学生ならではの「遊び心」と科学者の求める「シンプルさ」の共存点、さらには相乗効果の期待できる点を探索した


アイデアスケッチ

北尾(左図)

スケッチの段階では、雌雄の変化をそれぞれわかりやすく対比させる表現について模索した。当初はX字の矢印を用いた図を考えたが、雌雄別々に変化の様子を表現するためには、中央でつながったX字の矢印は分かりにくいなどの点から、雌雄を切り離した図に変更した。

中島(右図)

モチーフとする動物を魚類に限定し、それぞれの進化によって生じる変化をより顕著に見せようとした。特に、グッピーやサケなどいずれも実在の生物を具体例としてあげる事で、よりリアルな表現を狙った。


完成作品

イラスト制作:
北尾典子 芸術専門学群1年

今回特に苦心したのは、雌雄それぞれの体躯が変化を遂げる”過程”をいかに見やすく図示するか、という部分。グループの方々から様々なアドバイスを頂いたことで、自分のイラストを客観的に見て『伝えるデザイン』について熟考することができ、とても勉強になった。

イラスト制作:
中島靖雄 芸術専門学群1年

進化後の生物の描写を写実的にすることで、進化の過程でそれぞれの種が得た力強さや美しさを強調した。また、モチーフを魚類に限定したことを利用し、すべての魚が同じ水中にいるように見立てて、長い進化の歴史がひとつの溜め池の中で起こっているかのような演出を試みた。