日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会
研究会について
設立趣旨

近年の科学の発展はめざましく、その成果が国民生活にも反映されるようになってきました。ただ、新たに発見・発明した科学の成果が画期的で斬新であるほど、それ以外の分野の人がその原理や本質を理解するのが難しくなっています。より素晴らしい成果を生み出すためにも、その成果を国民生活により有益に反映させるためにも、他分野の研究者、行政関係者、企業開発者、さらには一般市民が、さまざまな科学研究の成果をより深く理解できることが望ましくあります。

   「百聞は一見にしかず」という言葉通り、優れたイラストレーションやムービーは、ものごとの理解を助けます。優れた作品の作成には基本となる技術やノウハウが必要ですが、多くの科学者・研究者は、科学の探究に精力を費やすため、力を注ぎ切れていないのが実情です。芸術領域においては、作品作成技術の向上やノウハウの蓄積は近年非常に高まっていますが、科学者や研究者が、芸術分野の人材と交わる機会がないため、活かされていません。

   芸術領域の視点からも、生命科学・化学・農学・工学等の科学領域は魅力的な題材です。また、動物解剖までしたレオナルド・ダ・ビンチを例に挙げるまでなく、本質を表した絵や動画の作成には、原理の理解が必須となります。しかし、科学領域との乖離が激しい近年においては、専門性の高い科学領域の原理理解は、かなり困難な状況にあります。欧米では、「サイエンスの視覚化」(サイエンスビジュアリゼーション)に関わる学問領域は、100年を越える伝統があり、いくつもの大学で専門学部が設置され、人材が社会に輩出されています。日本は非常に遅れており、その点も憂慮されます。本研究会設立の目的は、こうした現状改善のため、科学者・研究者とデザイナー・アーティストの交流の場を作り、情報交換と共同作業構築を実際に行うことです。活動は、各種科学領域と芸術学領域の双方を含む唯一の総合大学である筑波大学を拠点に、いろいろな機関で展開したいと思います。

   交流を通じて、お互いが使用する言語・機材の標準化を行い、将来的には、サイエンスビジュアリゼーション領域に新たな産業を創出することも目指します。