食と緑のマイスター育成講座「講義」

人間活動は、さまざまな動植物とのかかわりの中で営まれています。この実習では、「食」と「環境」に関連する6コースを設定し、 日常生活で接する動植物と人間生活との関連を取り上げて実体験することで、専門的な技術と正しい知識を身につけます。 講義科目ではいずれのコースでも必要となる「食と緑」に関する幅広い問題を提示します。 講義の後は市民と学生が当日の講義内容に関連して集団で討議を行います。

・5月12日 食べ物の生産から消費まで 納口るり子


内容:人口問題・貧困問題・環境問題・農業問題は、世界レベルで考える場合と、日本一国で考える場合とは、 大きく異なる場面があります。世界では人口が増加し、貧困層の減少が進まず、食料が不足しています。一方の日本は、 人口は減少局面に入り、相対的な所得階層の分化は問題となりますが、食料は輸入品を含めると過剰な状況にあります。 このような世界と日本の食料・農業・環境の問題を、対比して考えてみましょう。

  

・6月9日  遺伝子組換え作物と生物多様性 大澤 良

世界の食糧生産を支えてきた技術の中で植物の品種改良技術に焦点を当てて概説します。野生種から栽培種への進化に関わった収量性や 脱粒性など適応形質が分子生物学の発展によって明らかになってきていること、あるいはさらに収量を増やし安定化させる品種育成への 期待と機能性作物開発の期待に応えるべく勧められている品種育成の現状、さらには遺伝子組み換え作物の未来と生物多様性保全との かかわりを考えて見ましょう。

・7月14日 旨味と微生物の働き 吉田滋樹

食品製造及び食品の保存には微生物が深く関わっています。特に、いわゆる醗酵食品は世界各地にその地域独特のものが存在します。 これら食品加工における微生物の利用、さらに食品保存における微生物による劣化(腐敗)について解説します。また、近年、 食品中の様々な成分の機能性が注目されていますが、それらについて成分とその化学・生化学的機能性および物理化学的機能性に ついて解説します。さらに食品成分とアレルギーについても解説します。

  

・9月8日  畜産物の安全性 平林美穂

代表的な畜産物である卵・肉・乳の普及は私たち日本人の生活を確実に変化させてきました。しかしながら畜産物の利用を停滞させる 問題が浮上しています。講義では、社会問題・国際問題にまで発展している鳥インフルエンザや牛海面状脳症(BSE)等について 概説するとともに、畜産物の保健機能について紹介したいと思います。

・10月20日 世界と日本の水と田畑 佐藤政良

人間社会と水資源との付き合い方はどうしたら良いのでしょうか。水資源は、非常に地域性の強いもので、日本の問題と 世界の問題はずいぶん違います。通常は雨が多く降り、米作りを続けてきた日本、水資源開発を進めてきてなお、21世紀には 食料増産のための灌漑用水と都市用水との水配分を巡る争いが起こる世界、それぞれが今直面している問題は何か を考えます。

  

・11月10日 環境を守る微生物たち 中村 顕

微生物は我々の生活に密着したレベルから、自然界での元素循環にいたるまで様々なレベルの物質循環に関わる重要な生物です。 講義では微生物の多様性及び、物質循環と微生物機能の関連について概説するとともに、私たち人類がどのようにして微生物機能を 利用しているのか、またそれに伴って生じる諸課題について解説します。

  

・12月8日 環境保護と自然再生 上條隆志

環境問題の一つである生物多様性問題に焦点を当てて講述します。講義では、
(1)地球上の生物多様性パターンとその維持機構を理解する上で重要となる「生態学」についての概説
(2)種の絶滅をはじめとする生物多様性の危機についての概説とその事例紹介
(3)生物多様性の保全について
の事例紹介を行います。

  

・1月12日 人が関る森づくり 志賀和人

森林資源は再生可能な地域資源であり、多面的な機能を持っています。日本の現状は資源の循環的利用が阻害され、 森林や林業が国民に身近な存在とはなっていません。日本の問題点をどう分析し、どうすれば地域に即した森林利用や 森林政策が展望できるのか。
@森林所有と利用権(地域社会と森林の関係)
A森林施業と森林経営(市場対応)
B分権的制度・政策の構築(公益性と担い手)
3つの社会経済学的視点からスイスと日本を比較し、持続的森林管理に向けた課題を考えたいと思います。

  

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