[ 大会ホーム | 大会メッセージ | 大会日程 | 研究発表 | 特別行事 |参加 | 学会]


大会メッセージ



雁行する複数の歴史を俯瞰する

                         
元筑波大学教授 第9回筑波大会(1987年)開催大学代表
 宮脇 理
 

 本学会の二〇年史をご覧いただければお判りのように、第9回の筑波大学開催から今回までの14年間の斯学を取り巻く状況は、標題に掲げた複数の歴史が同時進行している時代といえます。「複数の歴史」とはジャン=リュック・ゴダールゴダール(1930〜:Jean-Luc Godard)の発言ですが、端的にいえば、価値の併存、あるいは雁行を認めざるを得ないということです。
 その最たる原因の一つは、1991年8月にソビエト社会主義共和国連邦(ソビエト連邦)を頂点とする、イデオクラシー(イデオロギー政治体制)の終焉を迎えたことにより、これからの時代が単純な選手交代の線上にあるのではなく、例えば、一方において脱・国民国家を目指す国家群が生まれ、他方では今後、国民国家に結集する気配をみせている現実が生まれています。この事については、本学会、「リサーチ・フォーラム」1999年夏において、私は次のように冒頭に述べました。すなわち「・・・(規範)の解釈には状況との相関を入念に考えねばならないが、斯学に限らず教育の根底ともなる国家の目的が絞り込めない現実、加えて個人が(法)をも替えることが可能な個人の権利を謳歌できる時代、云い換えれば大衆民主主義に向かう現実の中で〈規範〉を考える事は、それほど容易ではない・・・」と、、、、。このことは学としての美術、芸術の教育も真空の中でその「規範」を確定することの困難なことに言及したつもりです。
 流れる時空の中であるべき「規範」をうち樹てるには、差異ある価値をカオスの中に投げ込み、かつ、これを抱え込み、相互をせめぎ合わせてこそ、はじめて「規範」を探る道が開かれるのだと思います。
 さて、第9回開催の節は、ワープロ機の初期に象徴された機器類を駆使して、私は院生達と広報と学会運営を行った記憶があります。あれから14年、斯界の技術は当時とは格段の差がありますが、口頭講演や論考を何処までそれらに比例して、深め得ているかにも期待があります。
               2000年12月15日
(元 筑波大学)
(中華人民共和国・華東師範大学・顧問教授/同・厦門大学 客座教授)


メッセージ [花篤實宮脇理仲瀬律久岡崎昭夫]
[ 大会ホーム | 大会メッセージ | 大会日程 | 研究発表 | 特別行事 |参加 | 学会]