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『の』の字とは，この家の廊下の形を象徴的に表しています．住み手と建築家は，土地をみて，環境を考えて，お互い何案かのアイデアスケッチやレイアウト図を描きあいましたが，その中で廊下が居室をぐるりと取り囲む構造を建築家から提案されたときに思惑が一致したのでした．設計に対する様々な考えを一つの形にまとめることは非常に難しい作業ですが，うまくいくデザインプロセスの中には，かならず理屈より先に感性が働く段階があるものです． このプロジェクトの場合は，それが のの字 だったのです． 居室を取り巻く廊下は，それだけならロの字です．またはコの字．しかし，そこに蓄積の場としての中廊下が現れ，裏返しの のの字 となったです． つまり，のの字とはこの家のコンセプトを符帳として表す言葉なのです． |