温泉さおり / ONSEN Saori
研究指導:蓮見 孝
論文:遊園地におけるバリアフリーについて -車椅子で乗れる乗り物を目指して-
On the Possibilities of Barrier-Free Amusement Park Rides
作品:バリアフリーライド『HuGOON』
Barrier-Free Rides 'HuGOON'

これからは余暇時代です。人々の意識が、自分らしく充実し た毎日を送りたいという方向に変化してきていることで、こ れから先もこの傾向は強まることが予想されます。

今回は、このような余暇市場の中でも注目されている遊園 地について取り上げてみました。遊園地は、若者に混じって 家族連れの姿も多く、幅広い年代の人が訪れる場所です。し かし、乗り物にはバリアが多くみんなが楽しめるものではな いようです。障害があるために一度もジェットコースターに 乗ることができない若者も多いのです。

動物園も水族館もスポーツ施設も飲み込んでテーマパーク としてりっぱに成長してきている遊園地だから、今後みんな が乗れる乗り物が必要ではないでしょうか。そこで今回は、 様々な年代の方にアンケート調査をしたり、ディズニーラン ドの方や障害者の方にお話しを伺いつつ、様々な角度から現 在の乗り物の問題点や新しい乗り物の在り方について探って みました。

調査の結果、高齢になるにつれ体への刺激や音に不快感を 感じています。固定装置に関しては幅広い年代で、もう少し 柔らかく人にあった形態を望んでいます。障害者は乗ってす ぐスタートして、またすぐ降りるというスピードの速さに不 満を持っており、長さや高低差よりも乗りずらい形態や体を 縛りつけるような固定装置に問題があるということがわかり ました。半数以上の人が中・高齢者に喜ばれるものを望んで いるといういう事実、また、車椅子のまま乗れるというニー ズも重要視すべきです。

ちょっとした形態の工夫で、若者にも新しい感覚で楽し め、車椅子でも同じように楽しめるものがあると思われま す。


みんなが乗れる乗り物は、誰もが乗りやすく、どんな体型で もきちんと体を固定でき、なお乗り心地がいいものです。

後ろから乗ってそのまま前に降りられる。単純だけどこれ が車椅子には一番乗りやすい形。これが今回デザインの基本 としたことです。この乗り物は、主要パーツがすべて側面か ら出てくるため乗り降りに支障がなく、体が小さい子供や女 性でも乗り物との間にすき間ができないのはもちろん、車椅 子でも特別な装置を利用することなく固定できるよう空気圧 を利用しています。これは、同時に高齢者や障害者が苦手と する体への刺激を軽減できて、みんなにやさしい乗り心地を 与えてくれるものです。

空気の注入や身体の固定は中央のタワーで行うので、乗り 物自体は軽くてシンプルです。全体のデザインは、やさしさ が伝わるよう曲線を利用し、滴をイメージしてみました。

やさしく抱きかかえられながら海底を走る、そんな21世紀 型のコースターです。

乗り物部分模型 コースイメージ


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