大越 巨之 / OHKOSHI Naoyuki
研究指導:原田 昭

論文:SFが示唆する宇宙開発
The Space Developments Suggested by the Science Fictions
作品:Nobilis L -月面探索機
Nobilis L The Lunar Explorer

SFの前身は先史時代まで遡り、そのルーツは神話や伝説で あると言われています。マルコ・ポーロらによる見聞記が多 くの人々に愛された時代には、宇宙へ行き、そこで珍しいも のを見てくる、というような見聞記的なSFが主流となりま す。また時代が進み列強国が弱小国を侵略する帝国主義の時 代には、宇宙を侵略(宇宙人を駆逐)するというような侵略 もののSFが主流となりました。このようなことからSFは 時代相の反映であると言えるでしょう。

地球外知的生命体の存在はともかくとして、SFの中での 彼らのように地球人も何らかの必要に応じた宇宙人工島の建 造や恒星間宇宙船の開発などのSFの要素、いわゆるSFの ハードと呼ぶべきものは、その多くが科学論文に端を発して います。しかし多くの人々がそれらを必要とし、実現を望ん だ結果として、これまでSFの世界でしか存在し得なかった もの(例えば、衛星通信技術や実験用宇宙ステーションな ど)が実現している事を踏まえるならば、SF映画や小説な どが私たちにとって身近なものである分だけ、SFが私たち に未来の世界を示唆していると言えるのではないでしょう か。


現在、私たち地球人の活動を原因とする人口の爆発的増 加、資源の枯渇や大量に使用されるエネルギーの代償として もたらされる大気の汚染などの数々の地球的規模の問題が起 こりつつあります。それらの諸問題を解決することができる SF(多くのSF映画や小説で描写されているように地球外 から資源を手に入れることや宇宙へ移民するなど)が未来へ 向けて実現していくことになるでしょう。

未来を予測する事は難しいことですが、SFから未来の宇 宙開発状況をかいま見ることも可能なのです。
いま、私たち地球人が抱えている問題の一つに資源の枯渇が 存在します。これからも私たちの生活のための生産活動を発 展させるためには、そのための資源を地球以外の場所から得 るも考慮しなければなりません。地球に比べ環境の違いなど の制限もありますが、幸い月には鉱物資源やエネルギー資源 などの存在が確認されはじめ、また他の天体への発信基地と しての位置的利用や人類の地球に代わる生活の場としても注 目されはじめています。そこで実際に宇宙開発に携わる宇宙 開発事業団(NASDA)の方々の意見等をふまえて、これから 行われるであろう本格的な月利用のための準備段階を支援す る機器をデザインしました。探査を行う部分とそれにエネル ギーを供給する部分に分ける親子式形態をとり月面の地形や 鉱物、構造、地質その他に関する解明を行います。探査を行 う子機を3機装備し作業の能率化をはかります。
Nobilis



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