現代社会に浸透したパソコン。論文ではパソコンのインタ フェースを中心に変遷や現状の調査を行い、操作におけるリ アリティーという観点から問題点や将来のコンピュータ環境 に関する予測や提案を試みた。
パソコンはわかりにくい。初めてパソコンという機械に接 したとき、誰もが少なからず感じるのではないだろうか。わ かりにくさの由縁は、物理的作用が働かないことや、パソコ ンという道具にメタファーが存在しない事などが挙げられ、 ノートパソコンやPDAの登場はコンピュータのメタファー化 によるリアリティーの表現というアプローチと捉えることが 出来るのではないだろうか。
また、今後のコンピューティング環境について、コン ピュータの小型化や他の製品との融合などという観点から、 コンピュータに対する意識の消失と共に、コンピュータ本体 の形の消失が予測される。そして、この状況はマルチメディ アというキーワードに支えられることでの進化を目標とする ものである。そこで、マルチメディアに対応するインタフェースについて思案されることになる。
リアリティーを求めるという断面から、コンピュータを介 さない人間の行動やコミュニケーションを通じてインタフェースについての考察をするにあたり、ファミリーレスト ランで人間の行動の観察を行った。その結果、人間の行動に 冗長性という成分を見出すこととなり、冗長成分の発生をリ アリティーの一側面として捉えた。
以上から、パソコンのインタフェースへの冗長性の導入
は、マルチメディアという輪郭の定まらないメディアに結び
つくことでインタフェースにリアリティーを生み出すのでは
ないだろうか、という結論にたどり着いた。
マルチメディアの持つ表現ツールとしての特性に注目し、リ アリティーを与えるための冗長性という観点から、身体的イ ンタフェースの導入を念頭に、メディア・コントローラーを 制作した。
冗長性を支援する環境として具体的には、同時多発的情報
の操作を可能にすること。ハイパーメディアの階層構造を感
覚化すること。また、パソコン側からのアプローチとして、
GUIをメタファーとすることを試みた。