本作は、アルスエレクトロニカ・フェスティバル2011のCAMPUS展のために制作されたビデオインスタレーションである。リンツの中心をなすハウプトプラッツ広場に向けて、一台の望遠鏡が据えられている。その接眼レンズを覗き込むと、現実にはあり得ない物体が動き出し、非現実的な光景が立ち現れる。 装置の内部には、超高精細のモノクロディスプレイが設えられている。接眼レンズを通して像を覗くという体験は、VRゴーグルによる没入とは質を異にする、強い没入感をもたらす。加えて、鑑賞者のまなざしは、のぞき箱の内部という閉じられた空間に囚われることなく、レンズの先に実在する風景へと連続的に広がってゆく。鑑賞者は、装置の内部に映し出された映像と、眼前に広がる現実の風景とを比較しながら、その差異のうちに美的体験を享受する。 装置のなかでは、現実には動くはずのないもの——道路の白線、ポスターを掲げる掲示ポール——が、あたかも生物のように蠢いている。やがて町並みは蔦に覆われ、広場中央に立つ三位一体記念柱をも巻き込みつつ、建物の全体が地面の内部へと縮退してゆく。鑑賞者は、中世以来の町並みが解体され、テクノロジーによって再構築されてゆく風景に立ち会っているかのようだ。 装置の造形は、強固なステンレススチールによる接眼レンズ部、木製の三脚、そして白い強化繊維樹脂による鏡筒から構成される。鏡筒は通常の円筒形をとらず、鑑賞者のまなざしそのものが拡張されたかのような、特徴的な形態を有している。
Tsukuba Scope
Video installation,75×45×150cm
Ars Electronica Festival (Ars Electronica Linz GmbH & Co KG, Kunstuniversiteat Linz, Linz Austria)
