「祈晴柳津鳥瞰図(きせいやないづちょうかんず)」は、柳津町の全景を俯瞰した大判イラストレーションに、円形モニタ5台を配したミクスドメディア作品である。只見川沿いの山あいに抱かれた町の地形を、福満虚空藏菩薩圓藏寺をはじめとする社寺や家並みとともに、一枚の鳥瞰図として描き出している。その画面のあちこちに開いた円い窓のように、5台の円形モニタからは、町に受け継がれてきた祭礼や年中行事のアニメーションがのぞき見える。静止した俯瞰図と、その内側でひそやかに動き出す映像とが響き合い、上空から町を見下ろす視点と、人々の暮らしの只中へと分け入る視点とが、一つの画面の中で重なり合う。 モニタに映し出されるのは、七日堂裸詣り、団子さし、歳の神、センドムシなど、柳津町に脈々と伝わる行事の数々である。ただし本作が描くのは、祭りそのものの華やかな最高潮ではない。雪の夜に男たちが綱を綯い、家々で団子をさし、藁を束ねて歳の神を立てる——祭りの日に向けて黙々と準備を重ねる人々の姿にこそ、まなざしが注がれている。神仏とともに暮らし、地区で互いに協力しながら行事を絶やさず続けてきた、その地道な営みと、人と人とのつながりを浮かび上がらせるためである。 「祈晴」とは、文字どおり「晴を祈る」ことを意味する。雪深い奥会津にあって、晴れを願うという言葉はことさら切実な響きを帯びる。そこには、ハレの日(祭りの日)を待ち望む町の人々の思いと、柳津町のかけがえのない暮らしがこれからも曇りなく続くようにという制作者たちの願いとが、二重に込められている。 本作は、「祭り・年中行事」をテーマとした「やないづの家宝展2021」に際して、筑波大学の学生たちが制作したものである。コロナ禍のため柳津町への来訪が度々延期・中止となるなか、斎藤清美術館の地域おこし協力隊が集めた資料やリモートでの取材を手がかりに、町の姿を思い描き、そのイメージを育てて完成にこぎ着けた。外から町を訪れた「異郷人」の視点で柳津の宝物をすくい上げ、神仏と寄り添う暮らしと、それを支える祈りや交流のかたちを、目に見えるものとして記録した本作は、かつて斎藤清が生涯をかけて版画に刻み続けた雪国に生きる人々のひた向きな姿とも静かに響き合いながら、過疎化の進むこの町の記憶を内外へと伝えようとしている。
祈晴柳津鳥瞰図
ミクスドメディア
斎藤清美術館
