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左:図1 上:上空からのユダヤ博物館
ベルリンのユダヤ博物館は、2001年9月9日に開館したヨーロッパ最大規模のユダヤ博物館である。しかし、開館の2日後に9.11ニューヨークのテロが起こり、そのため1ヶ月程休館したそうである。こうしたことからか入館時の手荷物検査とボディーチェックは空港のセキュリティーチェックと同レベルで非常に厳密であった。
このユダヤ博物館の設計は、現在ベルリン在住のアメリカ人ダニエル・リベスキンド(Daniel Libeskind, 1946年ポーランド生まれ)、非常に良く計算されていて、建築やデザインの分野では話題の建築物である。リベスキンドは音楽から転身した異色の建築家で、2002年に第5回ヒロシマ賞を受賞した注目の建築家である。
日常の空間では水平、垂直、直角が基本である。ユダヤ博物館では、ベーシックな水平は多少保たれているものの、これらの基本が見事にはぐらかされているのである。それにより緊張感のある独特な空間を作り上げている。この感覚は、やはり実際に体験しないと理解できないものであろう。
出入口とミュージアムショップは、図1の左の18世紀風外観の建物にあり、地下の廊下を進んでメタリックな外観の展示施設(図1の右)に入るようになっている。
地階の会場で係員に3階へ行くよう指示された。常設展示の入口のある3階まで、一直線の階段をいきなり上ることとなった。常設展示は、ユダヤに関する膨大な資料をわかりやすく整理し、ユダヤ人の歴史と生活を紹介している。子供向けではないが、子供にもわかるように展示している。触れることができる展示も多く、理解してもらうための工夫が様々試されていた。コンピュータを利用した展示もユニークなインターフェースで単調さを感じさせないように作られていた。導線は明確で見終わると再び地下にでた。そこからユダヤ博物館のシンボルでもある「亡命者の庭」と「ホロコースト・タワー」の2つの空間を体験することになる。
少し傾斜のある細長い廊下の先に大きなガラスドアがあり、外の明かりが遠くからも見える。そのガラスドアを開けると、そこが「亡命者の庭」である。
庭は、約20m四方で、7×7に配置された49本のコンクリートの柱がが立っている。柱は、高さ約6m、一辺1.5mほどの正方柱である。庭の地面は、少し傾斜し、49本の柱も傾斜して立てられている。そのため平衡感覚が曖昧になるとても不思議な空間になっている。
「ホロコースト・タワー」はその内部に入る施設で、これも細長い傾斜した廊下の先にある。入口は黒い鉄の大きな扉で、係員が数名ずつ中に案内している。中はさほど広くなく、床面は少し傾斜した鋭角な角度のある台形で、壁も少し傾いていた。天井までの高さが10m程の空間で、照明はなく上部のスリットからの微かな外光が明かりとなる薄暗い空間である。一人だと心細くなるであろう空間であった。
http://www.juedisches-museum-berlin.de
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