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情報デザインの基本 7

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アフォーダンス 1

人が何らかの行動を起す時に、環境が自然な形で保有している情報をもとに瞬時に判断して行動している。こうした環境からの情報をアフォーダンスという。たとえば、ちょっと座りたいと思った時、どこかに腰掛けることができるものはないかと探すことをする。腰掛けるためには、地面から30〜50cmぐらいの高さにあり、40cm四方以上のフラットで、60キログラム以上の重さにも変型しないであろう面を持つ物体が必要となる。こうした条件にかなう情報を環境から得て腰掛ける行動を起こす。このように環境から情報を直接得ることをアフォーダンスという。

アフォーダンス(affordance)という言葉は、afford(〜ができる、〜を与える)という単語からジェームス・ギブソン(James J. GIBSON、1904 - 1979、米)が1960年代に表わした造語である。一言で言えば「環境が動物に提供する情報や価値」という漠然としたものである。これまで知のプロセスを解きあかそうとする試みは様々に行なわれてきている。特に心理学の分野で盛んに試みられている。このアフォーダンスもその一つであるが、知のプロセスを新たな視点から明解に表わしているものとしてその影響は大きい。

グニャグニャにまがった針金は回転させるとその形状が理解できる。これは動きから得られる時間経緯の視覚情報によって物体の形状を把握することができることを示している。
ある瞬間の視覚情報は静止した状態の2次元であるが、視点の移動や時間の経緯から厚みや奥行きなどの物体の変化する様子から3次元の構造を把握して特定の立体物を知覚している。静止した視覚情報から推論して物体を認知するのではなくて、移動や経過により変化する特定の視覚情報によって物体を理解している。変化する視覚情報から明らかになる不変なもの(特定の物体)として「不変項(インバリアント)」と呼んでいる。不変項を区分して、男性や女性、犬とかネコとかを特定する「構造不変項」と、こちらに近付いてくるとか、逃げいているとかの様子を特定する「変形不変項」として区分している。こうした不変項をピックアップすることで人間は知覚しているのである。

これまで視覚刺激が記憶から知識を引出して把握すると考えられていたが、アフォーダンスは変化する視覚情報からただちに知覚すると捉えた考え方である。

 
2002年12月

木村浩(情報デザイン/筑波大学芸術学系)

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