前回のこのコーナーで情報を整理すること、情報の構造化について述べた。Webでは、サイト全体の構造をわかりやすくするために情報を整理しグループ化を行なっている。
これらの仕分けされたグループにはラベルとしてタイトルがつけられ、そのタイトルは、主にトップページで目次として表示されたり、ナビゲーションシステムで表示されたり、個別情報への案内に使われることになる。ラベルのタイトルは、サイトにとって非常に重要な役割を持つことになる。タイトル数が多いと一目で把握することは難しくなる。Webではパッとみて理解できることが必須である。一目で把握しやすいタイトルの項目数は7±2個だそうで、ひとつのページからの分岐は7±2個が適切ということである。この7は魔法の数字と呼ばれている。この魔法の数字7は、認知心理学が提示したものである。
認知心理学とは、1970年代に表れた知のプロセスを解明しようと誕生した学問で、人の記憶するプロセスをコンピュータ処理になぞらえて示したものである。コンピュータをモデル化しているので情報処理心理学ともいう。記憶のプロセスはデザインにおいても1980年代以降注目されだした。特に、わかりやすいデザインの検討に認知心理学はデザインに重要な視点を与えることになった。
認知心理学では、記憶には短期記憶と長期記憶があるとしてモデル化している。短期記憶は入力された情報を20秒ほど保存できるところで容量も7個と限られている。入力された情報(感覚刺激)を反復(リハーサル)することで保存が持続される。長期記憶は永久ともいえる長期間保存できるところで、その容量も無限だそうである。
短期記憶には、保存・符号化・コントロールの3つの働きがあるとしている。短期記憶ではパッと見た時に漠然と残る残像のような薄い情報を保存する。その情報を長期記憶から引出し要求に添って符号化し、言葉として発話したり、文字として理解する。課題の要求に添って処理をコントロールし、たとえば買い物に行く場合など目的が達するまでリハーサルを繰り返し保存時間を延長したりする。短期記憶は要求に応じた情報処理の作業を行なう場所でもある。
短期記憶に保存できる容量の単位をチャンクと呼ぶ。チャンクとはパッと見てまとまりを感じる意味のまとまりや、見た目のまとまをいう。短期記憶に一度に保存できるチャンクの容量は7±2個で、様々な記憶の実験で確認されている数なのである。この数を、魔法の数7と呼んでいる。
2002年11月
木村浩(情報デザイン/筑波大学芸術学系)
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