デザインにおいてサインというとデザインの一分野であるサイン計画を指すことになる。しかし、サインとは、コミュニケーションにおいて核となるものである。
人間は言葉を使ってコミュニケーションを行なう。石ころを見て「いし」と発音する。石を「掴んで」「投げる」。ことばは、対象や行為を発声による音と符号化したものである。この発声による音の符号化体験を繰り返すことにより会話へと発展したと考えられる。符号化した音を複雑に組み合わせて意志の伝達を行なっている。
喋っている言葉を形態に符号化したものが文字である。符号化に使用した形態をシンボルという。文字の場合、シンボルを見て符号化に従った音を発声する。あるいは符号化している意味を記憶から引出す。何かを書き示したい時、まずイメージを言葉に置き換える、その言葉を符号化のルールに添った形態で描くことになる。
コミュニケーションとは情報をやり取りすることである。コミュニケーションするためには、まず情報を符号化して音や形に変換させ、音や形を符号として具体的に提示する。提示された音や形を復元して符号化から情報を取り出すことになる。符号化とはサインのシステムといえる。情報をやり取りすることは、サインを駆使してコミュニケーションすることである。そして、発信された情報を受信したものが情報として理解してはじめてコミュニケーションが成立したことになる。
言語によるコミュニケーションをバーバル・コミュニケーションという。複雑なことや難しいこともコミュニケーションすることが可能である。しかし、言語が違えばコミュニケーションはできない。そこで、より多くの人が共通して、また事前の学習がなくても利用できるサインとしてピクトグラムとよぶ絵文字が使用されている。ピクトグラムはノンバーバル・コミュニケーションとして、公共性の高い環境で有効に機能している。
情報とサインの関係は、コミュニケーションにとって非常に重要である。膨大な情報を如何に提示し、必要とする情報を如何に入手するのか。情報のコミュニケーションをデザインすること、それが情報デザインである。
2002年7月
木村浩(情報デザイン/筑波大学芸術学系)
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