今回から、情報デザイン、特にコミュニケーションデザインについて述べることにする。まずはサイン計画。ピクトグラムを使用して「トイレは右の奥にあります」とか「ここでたばこを吸ってはいけません」と理解させるために表示している標識などのことをサインと呼んでいる。様々なサイン表示を総合的計画的に設置することをサイン計画やサインシステムデザインと呼んでいる。
ではサインとは何か、野球で監督が「ここで盗塁しろ」とか「バントしろ」と指示をだすサインと同じである。野球の場合は相手選手に悟られないように、自チームだけが分かるように記号化して行なっている。記号を理解しているもの同士がコミュニケーションすることができる。野球の場合は、積極的に発信されたサインから情報を理解し次の行動を導いている。このような積極的な情報を受け取るだけでなく、日常生活において様々な場面で人間は常にサインとのコミュニケーションを試みている。朝起きて気温を感じ天気を確認して、その日の服装を決める。空腹を感じ朝食をとる。こうした日常の行動も五感が察知したサインから読み取った情報に導かれた行動なのである。
人間は、自己保全のために様々なものからサインを察知し情報を必要としている。サインは視覚の情報ばかりではなく、臭いや音、温度・湿度も情報源となる。情報に繋がるものはすべてがサインといえる。サインから得られた情報によって自分の状況を判断し、次の行動を起すことができるのである。こうしたサインとのコミュニケーションは、なにも人間だけのことではなく、すべての動物が生き抜くために行なっている行動なのである。また、察知することだけでなく、しるしやマークをつけて区別することもサインである。動物が自分のテリトリーを示すためのマーキングや、しおりで本に印をつけることもサインなのである。
誰にでも容易に察知できるサインを配置し、わかりやすく情報を入手できる環境は望ましいことである。しかし、安易な設置は環境のバランス損なうことになる。サイン計画は、サインの形状や表情とその配置を検討することに加え、サインの設置によって快適な環境を作れるように総合的な視野が必要なデザインである。
2002年6月
木村浩(情報デザイン/筑波大学芸術学系)
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