


Details
TITLE :
絵付けプロジェクション
CREATOR :
浦川京子
About
日本には歴史と二度に育まれ受け継がれてきた生活用品が数多く存在する。しかし、伝統的な製法や原材料により作られてきたこれら工芸品は現代の生活様式の変化により大変厳しい状況におかれている。このような状況の中でより多くの人々に工芸品を知ってもらいより身近に親しんでもらうきっかけとなる”照らす”を提案する。
今回対象とするのは佐賀県で有名な有田焼だ。繊細で華やかな絵付けが特徴的な白磁である。400年以上もの歴史ある工芸品だが、近年焼き物の需要の低下や海外からの安価な輸入品の増大、高額な商品というイメージから売り上げは年々低下傾向にあり、そもそも触れ合う機会が格段に減っていると感じる。
そこでまずアイキャッチとなるような展示構成を提案する。対象とする店は地下鉄の土産屋が並ぶ通りに面した店舗の一つ。通行人に見てもらい、興味を惹いてもらう第一歩となるよう入り口に設置する。白壁の前に何も描かれていない白磁を置き、陶磁器から物語が溢れ出しているかのように絵付けの柄をアニメーションで流す。絵柄が陶器に重なると動きが止まり、一つの皿が完成される。アニメーションを流すことでより多くの世代の人々に親しみを持って店に近寄ってもらうことを目的とする。流すアニメーションは、異人柄といった昔ながらの有田焼の絵柄から若者にも親しみやすいような可愛らしい絵柄など様々な絵柄が用意されている。
スクリーン上に流れる映像は店頭に置かれているタブレットを使用し好きな絵柄をタッチすることで様々な種類の映像を楽しむことができる。
ここではすべて絵付けの非常に細かい大皿といった高価なものは取り扱わない。一般家庭でよく使用される大きさの皿、コップ、茶碗に投影することを想定している。気に入った絵柄が見つかると実物を見てその場で購入することができる。
また、タブレットを通して粘土から焼き物に出来上がるまでのメイキング動画の上映も想定している。絵付けをする様子や白い磁器になるまでの過程を見ることでよりじっくり一つ一つの作品に込められた情熱や歴史を感じてもらいたい。
目に触れることも日々少なくなっている伝統工芸品は生活用品から芸術作品として価値観が変化していっているのではないかと感じている。芸術作品としての工芸品と生活用品としての工芸品を分けて考えてもらいたい。このプロジェクションはあくまで本物の商品の見本のような役割でしかないが、渋く古びた近寄りがたい印象からオープンで砕けた演出をすることで若い世代からも興味を惹いてもらうことを意図している。プロジェクションを通してより多くの人々に工芸品を親しんでもらえたらと思う。