


Details
TITLE :
星雲
CREATOR :
染谷 美也子
AWARD :
楽天賞 受賞
About
星雲とは?
—輝く雲のように見えるもの。空中に漂うように存在する、規則のあるまとまりをもった、光を繊細に反射するテグスの集合体。テグスは、光が逆光に見えるような状況において、細かくチラチラとした光を反射する。この現象に着目した時、テグスが巻かれている状態から取り出した時に見られる特有の、クリンクリンとした形状が、最も美しく光を反射することがわかった。そこで、その形状を保ったまま平面的にテグスを拡大させるために、テグスをあばり編みと呼ばれる手法で編んでいった。テグスは、毛糸などの一般的な糸とは異なり、非常に軽く、自重でたわみにくい上に、もともとついている形状のクセが非常に強い。したがって、規則正しく編んでいても、その軽さとクセによって、不規則に見えるようなものが出来上がった。しかし、その不規則さの中に見られるテグスのヨレ、網目のズレ、テグス同士で結ばれた点、平面からのテグスの飛び出しその全てが、光源の光を絡めとり、細かい光の粒をその表面に表出させている。また、平面上にしたテグスゆっくりとを回転させると、光の粒が静かに流れるように移動して見える。人から見た時に斜めに平面が方向を向いている際に、光源によってできるテグスの影の効果もあいまって、この星雲は最も瞬く。この編んだテグスを展示する時、編んだものを針金のフレームにテンションをかけて固定した。その際、なるべくテグスが雲のごとく浮いて見えるようにフレームの存在感を消したかったがために黒く塗りつぶした。これらの創作方法と工夫から、細かく輝く光を放つ、宙に漂う星雲のようなものを作り出すことができた。
ファッションブティックにおける夜間照明の提案
店舗を照らすということについて、この星雲はその照らすという行為に対しての提案にとどめることにする。この星雲自体には、ある場所を明るく照らすような機能はない。この星雲は、光源の光を美しく変換するためのものだ。そこで、私はこの星雲を夜間の、通常店舗が閉店する時間の中でのみ機能する、ショーウィンドウの装飾的な照明器具として、これを提案する。ファッションブティックなどでは、閉店していても夜間はショーウィンドウのみ照明をつけたままにする店舗も存在する。この星雲を用いた提案では、この夜間でも照明をつける店舗を想定する。ショーウィンドウに設置された星雲は、日中では太陽の光があり星雲は太陽光を浴びても瞬くことはない。むしろ、明るい太陽光の元にあると、その存在自体が見えにくくなり、雲のように希薄な存在となる。しかし夜間になると一転、星雲の存在を希薄にする太陽光はなくなり、光源は店舗からの照明のみとなる。星雲に当てる光を、歩行者から見て逆光になるように設定させれば、夜間に店舗の前を通る通行人から見ると、きらめく星雲が見え、昼間のショーウィンドウの様子とは異なったものを見ることができる。星雲を夜間に照らすことによって、昼と夜で印象の全く異なるショーウィンドウを演出することができ、そのショーウィンドウの美しい様子から、店舗に対して人々から興味を持ってもらうきっかけになり得るだろう。