宮脇 理 編 『緑色の太陽―表現による学校新生のシナリオ』

国土社 2000年 ISBN 4-337-48213-X
Copyright (c) Osamu MIYAWAKI et. al, 2000
 西暦2000 年の幕開けとともに、教育実践・教育理論の新たな展望を切り拓くために本書は編まれた。編者は、『四本足のニワトリ』(既刊・1998 年)の編者として、子どもの表現世界と現代社会の関係にメスを入れた宮脇 理。表現活動にベースを置く教育を展開することにより、学校教育の新たな可能性を追求した本書は、『四本足のニワトリ』の続編にあたるといってもよい。
 『緑色の太陽―表現による学校新生のシナリオ』は、これまでの学校教育を日本近代に特有な啓蒙的システムとして、捉え直し、相対化し、批判する理論書であると同時に、日本の学校教育の未来像を描写する教育実践のためのシナリオでもある。いわば、学校教育の俯瞰図と道標をともに提示することによって、閉塞状況に陥った学校像を転換するためのストラテジーが示されている。前書『四本足のニワトリ』が、市民・児童・表現をキーワードに日本社会に潜む芸術観の問題を「分析」したのに対して、『緑色の太陽―表現による学校新生のシナリオ』は、表現活動によって日本の学校教育を改善するための「戦略」を強調している。
 書名の「緑色の太陽」は、日本の表現観の基底にある高村光太郎の評論を意識したものであるが、これを転じて、近代の表現観の総体をこの語に象徴させることにより、その意義と問題点をともに検討する姿勢を明らかにしたものである。そして、副題の「表現による学校新生のシナリオ」という言葉に示されるように、章を進めるにつれて、学校教育を活性化させるための具体的な方法論に焦点が絞られていくという構成になっている。流動的なだけに希望と不安が交差する現代日本の教育状況のなかで、あるべき教育の姿を追究し、教育実践のアクチュアルな感覚を保持しようとした『緑色の太陽―表現による学校新生のシナリオ』を多くの先生方に読んで頂けることを執筆者一同願ってやまない。いま、表現活動を軸にして学校が生まれ変わる。[広報リーフレットより]
本書の広報リーフレットをpdf 書類でダウンロードできます(2MB)。  [提供:三浦浩喜氏]

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 目次
 まえがき 宮脇理

 第1章 高村光太郎へのオマージュ 宮脇理

 第2章 近代日本における表現論の展開と美術教育―「緑色の太陽」から戦後の創美まで 山木朝彦

 第3章 日本と英国―芸術と教育の連続性をめぐって 直江俊雄

 第4章 学校を文化のシェルターに―学校の共同性に根ざした芸術教育への道程 三浦浩喜

 第5章 感覚の「総合」と「総合的な学習」の接点―美術教育再生へのストラテジー 居上真人・木村典之

 第6章 現代・美術のまなざし―メディウムとしての身体 渡邊晃一

 第7章 起源への放浪―芸術教育の近代から 永守基樹

 第8章 子どもの心はよみがえるのか?―創造主義の限界の克服に向けて 栗山裕至

 第9章 ヴァーチャル,ネットワーク,表現 伊藤文彦

 第10章 混沌の中から学校新生のシナリオをつくり出す 宮脇理

 おわりに 山木朝彦

 用語解説