日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会
イベント
2015年
出題:
三輪佳宏

専門領域:
医学医療系/バイオイメージング

イラスト制作:
田島由佳子/塚越智夏/水野真実子/
野口瞳/窪田千莉


in vivo非侵襲イメージングで細胞社会をみる
(アート重視のイラスト)

目的:高校生以上の一般人や研究者向けに、研究の目的や概要を説明するスライド
対象:高校生・一般人〜医学研究者(年齢15〜70歳)

問題

次の文は、生きたままのマウスの体内を、マウスに傷付けることなく非侵襲に蛍光イメージングする方法を使って複数の異種細胞によって形成される細胞社会を解析する研究についての説明文です。挿絵としてこの内容の理解を助け、様々な生命の仕組みの解明が進む明るいイメージの分かりやすいイラストを描いてください。

解説

これまで、細胞の中のタンパク質の連携によって生み出される「タンパク質社会」については解析が進み、様々な情報が蓄積しています。しかし、「細胞どうしがどのように相互作用しているか?」については、まだまだ解析が限定的で、とくに異種細胞間での相互作用によって形成される「細胞社会」については、十分に解析が進んでいません。細胞社会に対する理解を深めることは、例えばiPS細胞を用いて臓器を形成することを目指す場合にも、必要になります。

私たちは、生きたままのマウスの体内でのin vivoイメージングする技術を発展させることで、直接、生きた動物個体の中での個々の細胞の働きを解析しようとしています。これまではマウスを研究する際には、動物を殺しながら一部をサンプルとして取り出して分析をする手法が中心でした。しかしこういった方法では、同じマウスの時間経過を調べたり、1匹1匹のマウスの個体差について調べたりすることは難しく、たくさんの動物を殺しても不正確なデータしか得られないこともよくありました。そこで私たちの研究室では、蛍光タンパク質や有機系低分子色素を用いて、細胞内の様々な変化に応答して光り方が変化する分子スイッチ機能つきのプローブ開発を進めています。またこれと並行して、民間企業と連携した新しい飼育方法の準備なども進めてきました。

これまでに、近赤外光を使って、マウスの体内を非侵襲で3次元イメージングする技術を確立しました。ほ乳動物の体が不透明なのは、ヘムによって光が吸収されるからですが、650 nmより波長が長い近赤外光(〜900 nm)はこの吸収を免れるため、ほ乳動物の体内に数センチメートルの深さまで浸透できることが知られていました。私たちはこの近赤外の中で2色の色素を同時に識別しながらイメージングできる手法を確立しています。この技術を応用すると、マウスを傷つけることなしに、ヒトに似た様々な疾患の状態を非侵襲近赤外蛍光イメージングによって調べることが可能になります。それぞれの疾患をイメージングするための遺伝子操作マウスをたくさん開発することによって、様々な病気を克服するための研究を行うことが可能になります。  

この近赤外非侵襲3次元蛍光イメージングを使って、体内の複数の細胞を同時に観察することで、体内の「細胞社会」を解析することを目指しています。そこで、今回の課題では、生きている動物体内の「細胞社会」を、近赤外非侵襲蛍光イメージングの手法を使って解析することを表すイラストを作成してください。


評価のポイント
1.  課題の内容や出題者の意図を正確に表現しているか。
2.  一目見て内容が分かりやすくできているか。
3.  魅力的でインパクトのある絵になっているか。
4.  光音響イメージング手法の価値や原理が正確に表現できているか。