日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会
イベント
2011年

ヒト総合失調症モデル生物としてのショウジョウバエの有用性

出題:
和田洋 生命環境科系(教員)
本多隆利 生物学類2年(学生)

専門領域:
神経科学・発生生物学

イラスト制作:
市川万那美 芸術専門学群1年
長田絵理香 芸術専門学群1年
黒木沙彩 芸術専門学群1年

目的:ヒト統合失調症モデル生物としてショウジョウバエを用いる有用性」を示す一般向けの解説図の作成
対象:研究者・学生・一般読者(科学に関心のある方)
サイズ:自由・カラー

問題

統合失調症は、約100人に1人が発症する高い発症率を示す精神疾患でありながら、発症の原因について詳しいことは明らかにされていない現状である。近年、神経科学における目覚ましい進歩に伴い、脳神経疾患の原因候補遺伝子が数多く同定されてきた。原因候補遺伝子から実際の脳の病態に至るまでの複雑なメカニズムを解明するためには、有効なモデル生物を用いた分子遺伝学的アプローチが要求される。この点でショウジョウバエはその高い利便性や、遺伝学研究材料として長い歴史があることはもちろん、近年ではヒト疾患遺伝子の多くがショウジョウバエにおいても保存されていることが明らかになり、精神疾患研究への応用面でも可能性を秘めていると言える。しかし、新規のアプローチである ために一般の方はもちろん研究者も含め、ヒト統合失調症モデル生物としてショウジョウバエを用いる有用性を的確に理解されている方は少ないと思われる。そこで今回、「ヒト統合失調症モデル生物としてショウジョウバエを用いる有用性」についてイラストを通して視覚的に表現し、このアプローチを始めて知る方も容易に理解できるようなサイエンスイラストレーションを制作することを目指す。


話し合った内容のポイント

4つにまとめた「モデル生物としてショウジョウバエを用いる有用性」について、それぞれの概念をいかにシンプルに表現するかに力を注いだ。相同遺伝子など表現の難しい概念もあったが、具体的な研究背景や遺伝学的手法を質問に応じて解説し、どの情報をイラストとして取り入れるかを話し合った。マウスやヒトとの比較や記号を用いる事で、一目で解釈できるよう考察した。また、全体の構図にも配慮した。


アイデアスケッチ

アイディアスケッチにおいて、アカデミック的なものからイラスト的な表現の案まで描き、本多さんと話合いながらイメージに近いものを探しました。また、「ショウジョウバエを疾患モデルとして利用するメリットを表現する」という本来の目的からそれないよう、最も抑えるべきポイントはどこかを念頭において案を出していきました。


完成作品

イラスト制作:
市川万那美 芸術専門学群1年

1ネズミとハエの思考と行動パターンの比較を表すために行動パターンを矢印で表しました。
2ハエの成長サイクルの過程を輪っかで表しました。成長していくごとに輪の線の色を濃くしました。
3例としてハエの幼虫にGFP投与の図を書きました。見易いというのを表現しました。
4ヒト疾患遺伝子の75%をハエも持っている説明図を円グラフで表し、ヒトの図とハエの図をピンクの帯で結びその帯上にDNAを書いて同じであることを表現した。

イラスト制作:
長田絵理香 芸術専門学群1年

今回の課題で苦労した点は問題の解釈、そして何を表現すればそれが最も強く伝わるかを考えることだった。また、自分の専門外の分野である分、アバウトなイメージでは具体化するのが難しく、相手とのコミュニケーションの必要性も強く感じた.

イラスト制作:
黒木沙彩 芸術専門学群1年

シンプルな線を使ってハエなどの生物を描くことで全体的に画面すっきりとさせ、内容がストレートに伝わるように工夫した。 また、なるべく文字を減らすことができるように、イラストだけで内容が伝わるようにすることを心がけた。