日高健一郎■プロフィール

■職名 筑波大学芸術学系 教授 

■専門分野 西洋建築史・建築修復論・世界遺産論

■学位 工学博士 

■生年月日 1948年12月16日

■略歴 1973年、東京大学建築学科卒業後、同大学院工学系研究科修士課程・博士課程に進学。この間イタリア政府給費留学生としてローマ大学で、アルナルド・ブルスキ教授の指導下、ルネッサンス建築史を学ぶ。日本学術振興会奨励研究員、豊橋技術科学大学助手、筑波大学講師、助教授を経て現職。この間、日本学術振興会特定国派遣研究者としてイタリア・ギリシャに滞在。 1990年より3次にわたり、文部省科学研究費によるハギア・ソフィア学術調査を研究代表として実施。

■学会・協会等における活動

日本建築学会西洋建築史小委員会委員として活動。イコモス(ICOMOS:記念物と史跡に関する国際委員会)の日本国内委員会理事として国内外の歴史的建築物の保存に協力、「歴史的建築物の修復、補強、解析に関する国際専門家会議」に日本代表として参加、『歴史的建築物の修復、補強に関する国際指針』の作成に貢献。

■受賞    日本建築学会奨励賞(論文) 1998年

                イタリア政府マルコ・ポーロ賞 1992年

■研究主題(詳しくは研究内容のページをご参照ください)

@イタリア・ルネッサンスの建築書研究、建築理念および様式論の研究

Aユスティニアヌス帝期を中心とする初期キリスト教建築と古代ローマ建築の関係

Bハギア・ソフィア大聖堂研究

C古代と中世における地中海域の建築石材の同定、特性、利用に関する研究

D組積造、石造ドーム架構空間の発生と系譜

E地中海と中東における古代から中世の異文化交流と建築文化の展開

F歴史的建築物、都市環境の保全、修復、活用に関わる理念と国際協力

G世界遺産条約の特性と適用に関する諸問題、特にアジア、中東地域における世界遺産の保存と活用

 上記の研究主題に関し、豊富な在外研究の経験と成果を活用して、文献・資料研究と現地調査を行っている。資料研究の主要な対象は、各地文書館所蔵の膨大な一次資料のほか、ウィトルウィウスの『建築十書』(前1世紀)、プロコピウスの『建築について』(6世紀)、アルベルティ、フィラレーテ、ジョルジョ・マルティーニらの『建築書』(15世紀)等であり、関連資料として、コロンナの『ヒュプネロトマキア・ポリフィーリ』(1499)についても古典学の専門家と共同研究を進めている。

 現地調査は、科学研究費(文部科学省、日本学術振興会)の助成を受けて、トルコのイスタンブールで1990年から実施している。関連調査は、イタリア、ギリシャ、クロアチア、キプロス、シリア、ヨルダン各国で行った。ハギア・ソフィア大聖堂学術調査団(代表:日高健一郎)による同大聖堂(イスタンブール)の総合建築調査では、国内外の共同研究者とともに、劣化、変形を示す現状の実測と記録(ドキュメンテーション)、実測結果にもとづく形状解析、構造解析、熱画像解析、堂内微気候の長期自動観測と微生物の影響等、多岐にわたる学際的調査研究を国内外研究分担者の協力を経て継続している。研究成果の公開は、学術論文の他、アテネ大学、ローマ大学、フィレンツェ大学、ミラノ工科大学、ザグレブ大学での招待講演、講義でも行い、好評を得てきた。

 2002年度は「西洋建築史の新たな基盤形成と展開」という課題で科学研究費企画研究の助成を受け、研究代表者として西洋建築史学の再構築と活性化のための活動を行っている。2003年度には、日伊文化交流の一環として、「日伊大理石セミナー」を実施の予定。

   近年の主要業績

【学術論文、研究発表】

・高根沢均、日高健一郎、「ラヴェンナとコンスタンティノポリスにおける初期中世のバシリカ式教会堂―ハギア・ソフィア大聖堂とユスティニアヌス帝時代の教会堂建築(2)」『日本建築学会大会学術講演梗概集』、2002年8月、pp.5-6

・岩出まゆ、高根沢均、日高健一郎、「サン・ヴィターレ聖堂における8基のピアの表装石材について―現地調査中間報告― ―ハギア・ソフィア大聖堂とユスティニアヌス帝時代の教会堂建築(3)」、『日本建築学会大会学術講演梗概集』2002年8月、pp.7-8

・高山仁志、花里利一、日高健一郎、「地震とモニタリングの調査―ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その9)」、『日本建築学会大会学術講演梗概集』pp.25-26、2001年9月

・花里利一、高山仁志、日高健一郎、「環境モニタリングによる調査―ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その8)」、『日本建築学会大会学術講演梗概集』pp.23-24、2001年9月

・佐藤達生、花里利一、河辺泰宏、日高健一郎、"Architectural-Structural Survey of Hagia Sophia (1) -Deformation of Supporting Structures and Dome Base", Proc. of IASS Symposium, Oct., 2001, Nagoya

・佐藤達生、加藤史郎、河辺泰宏、日高健一郎、’Architectural-Structural Survey of Hagia Sophia (2) -Photogrammetric Survey of the Main Dome’, Proc. of IASS Symposium, Oct., 2001, Nagoya

・日高健一郎、「ハギア・ソフィア大聖堂について―歴史と沿革」、「ハギア・ソフィア大聖堂上部構造の変形」、『ハギア・ソフィア調査団研究成果報告会報告集』、2001年3月

・佐藤達生、加藤史郎、河辺泰宏、日高健一郎、"Geometrical Analysis of the Setting Lines and the Original Form of the Main Dome of Hagia Sophia Reconstructed in the 6th Century", Proc. of IASS Symposium, May, 2000, Istanbul

・岩出まゆ、日高健一郎、ハギオス・ポリエウクトス聖堂の研究―ハギア・ソフィア大聖堂とユスティニアヌス帝時代の教会堂建築」、『日本建築学会関東支部2000年度研究発表会研究報告集』、2000年3月、pp.389-392

・高山仁志、松本光明、日高健一郎、’The Environmental Monitoring in Hagia Sophia in Istanbul―A preliminary report of the long-term monitoring of themicro-climate in the large domed masonry structure’, 4th International Conference on Biodeterioration of Cultural Property, ICBP-4,

・坂本功、西沢英和、日高健一郎、藤田香織‘Toward structural Safety Standards for the Historical Wooden Buildings in Japan’, “The Use of and Need for Preservation Standards in Architectural Conservation” , ASTM Publications、1999年

・青木孝義、加藤史郎、石川浩一郎、日高健一郎、Mufit YorulmazFreidun Cili, ‘Principle of Structural Restoration  for Hagia Sophia Dome’, 『Structural Studies, Repairs and Maintenance of Historical Buildings』Southampton, 1997年6月,pp.467-476

・日高健一郎、「サント・ステファノ・ロトンドをめぐる問題―クラウトハイマーの遺産をどう受け継ぐか―」、『世界の都市と建築』近代都市基盤施設研究会、1997年5月、pp.1-6

・青木孝義、加藤史郎、石川浩一郎、日高健一郎、「ハギア・ソフィア大聖堂のドームの変形性状と耐震強度」、『構造工学論文集』43B号, 1997年3月、pp.641-646

・青木孝義、伊藤憲雄、角舎輝典、日高健一郎、「ハギア・ソフィア大聖堂を中心とする歴史的建造物のモルタルの強度と弾性係数」、『構造工学論文集』43B号, 1997年3月、pp.635〜640

・佐藤達生、日高健一郎、河辺泰宏、青木孝義、山下王世、「ハギア・ソフィア大聖堂メイン・ドームの施工線の形状」、『日本建築学会計画系論文集』485号、1996年7月, pp.219-226

・河辺泰宏、青木孝義、佐藤達生、日高健一郎、「ドーム殻に設置された円筒管とドームの形態的特徴について―ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その3)−」、『日本建築学会大会学術講演梗概集』、1995年8月、pp.433〜434

・河辺泰宏、佐藤達生、飯田喜四郎、日高健一郎、「建設年代ごとに見たドーム・コーニスの特徴―ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その2)−」、『日本建築学会大会学術講演梗概集』1994年9月、pp.1215〜1216

・河辺泰宏、佐藤達生、飯田喜四郎、日高健一郎、「等高線図にみるハギア・ソフィア大聖堂ペンデンティヴの形態的特徴―ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その1)−」、『日本建築学会大会学術講演梗概集』1994年9月、pp.1213〜1214

・日高健一郎、佐藤達生、河辺泰宏、Mufit Yorulmaz、’ Photogrammetry of the Eastern Semi-Dome of Hagia Sophia, Istanbul’, Public Assembly Structure from Antiquity to the Present,Proceedings of the OASS-MSU International Symposium Istanbul, 1993年5月,p121〜130

・青木孝義、加藤史郎、日高健一郎、’ Crack Pattern inHagia Sophia Dome and its Comparison with those from analysis’, “Innovative LargeSpan Structure”IASS―CSCE International Congress, 1992年7月、pp.730-741

・加藤史郎、日高健一郎、青木義孝、’ Finite―Element Modeling of the First and Second Domes of Hagia Sophia’, “Hagia Sophia from the age of Justinian to thePresent Cambridge”, 1992年6月, pp.103-119

・日高健一郎、青木孝義、加藤史郎、「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のドームの木製リングの構造的役割について」、『建築史学』14号、1990年3月、pp.23-56

・日高健一郎、青木孝義、加藤史郎、’ Structural Stability and Profile in the Dome of Hagia Sophia, Istanbul’, “Structural Repair and Maintenance of Historical Building”, 1989年4月, pp.267-276

・日高健一郎、「アトランティコ手稿 310r,vについて」、『建築史論業』稲垣栄三先生還暦記念論集、1988年10月、pp.383-422(1989年度日本建築学会奨励賞(論文)受賞論文)

・日高健一郎、La casa della Virtu e del Vizio nel Trattato del Filarete’’, “Les Traites d’Architecture dela Renaissance, Actes du colloquetenu a Tours du 1er au 11 juillet 1981” 1988年4月, pp.129-134 

・日高健一郎、ハギア・ソフィア大聖堂のドームについて―大聖堂とドームの建設経緯および調査報告―」、『芸術研究報』9、1988年3月、pp.221-239

・日高健一郎、「アンコーナのキリヤコス―その生涯と初期ルネッサンスにおけるギリシャ世界の発見―」、地中海学会大会研究発表会、1981年6月

他多数

【著書】

・日高健一郎、「ドームの起源―パンテオンの誕生」、「ハギア・ソフィア大聖堂からオスマン・トルコへ」(『つどいの空間−ドーム建築のデザインと技術』、財団法人日本建築センター、1997年8月、pp.94-97)

・日高健一郎、「クラシック建築の完成」、「クラシック建築の発展と変化」、(『世界建築大全集第4巻:ギリシャ・クラシックとヘレニズム』、小学館、1995年10月、pp.109-115,265-274)

・日高健一郎、「ブラマンテと古典主義建築」、(『世界美術大全集第12巻:イタリア・ルネッサンス2』、小学館、1992年2月、pp. 289-301,332-437)

・日高健一郎、「15世紀の建築―フィレンツェからイタリア各地へ」、(『世界美術大全集第11巻:イタリア・ルネッサンス1』、小学館、1992年2月、pp.29-60,374-377)

・日高健一郎、「マニエリスムの建築家たち」、「水仕掛けの庭園、ヴィラ・プラトリーノへの追想」、(『NHKフィレンツェ・ルネサンス第6巻:花の都の落日』、日本放送協会出版局、1991年10月、pp.49-57,60-72)

・日高健一郎、「ルネッサンス建築の創始者たち」、「パラッツオとヴィッラ:ルネッサンス建築の二類型」、(『NHKフィレンツェ・ルネサンス第2巻:美と人間の革新』、日本放送協会出版局、1991年8月、pp.7-32、37−38)

・日高健一郎、「クレタとミュケナイの宮殿」(『住まいの文化誌 邸宅佳人』、ミサワホーム、1991年8月、pp.196-198)

・日高健一郎、谷水潤著『イスタンブール:建築巡礼17』、丸善株式会社、1990年8月、pp.5-73

・安部公正、日高健一郎、鈴木博之、槇文彦、東孝光著、『世界の建築6:ルネサンス・マニエリスム』、学習研究社、1983年1月、pp.114-142,171-181

【翻訳】

・日高健一郎、三上弘彦訳、『レオナルド・ダ・ヴィンチ「パリ手稿B」』、岩波書店刊、1995年4月

・日高健一郎、三上弘彦訳、『レオナルド・ダ・ヴィンチ「パリ手稿K」』、岩波書店刊、1993年3月

・日高健一郎訳、フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ著、『建築論(ラウレンツィアーナ手稿)』、中央公論社、1991年11月

・日高健一郎、河辺泰宏訳、カルロ・ペドレッティ著『建築家レオナルド』(全2巻)Carlo Pedletti “Leonardo Anchitetto”、 学芸図書、1990年11月

・上田恒夫、篠塚二三男、佐藤康夫、小佐野重利、日高健一郎、越川倫明、石鍋真澄、森田義之訳、ジョルジョ・ヴァザーリ著『ルネサンス彫刻家建築家列伝』、白水社、1989年1月

・ヴォルフガング・ブラウンフェルス著 日高健一郎訳、『西洋の都市 : その歴史と類型』、丸善, 1986

・佐々木英也、若桑みどり、長尾重武、日高健一郎訳、「ミケランジェロ・ブオナローティ、シャルル・ド・トルナイ翻刻『ミケランジェロ素描全集』(全4巻)」、講談社、1981年11月